Columnセミナーレポート
2021.6.25
今回のコラムでは、2021年4月9日に千葉工業大学大安藤昌也教授と開催したコラボセミナー「DX時代のエンジニアが知るべきUXデザイン-DX開発に必須な知識と現場での実践方法を学ぶ-」から、「UX品質がもたらす開発現場でのソフトウェア改革」について、振り返りながら解説をします。
改めて「よいソフトウェア」とはどんなものでしょうか? 一般的に使いやすい、多機能、安全などいろいろな基準がありますが、いま注目したいのは利用者視点での価値ではないでしょうか。でも利用者視点での価値はどのように実現するのか? そもそも利用者の価値はどのような方法で評価するのか? わからないことが多いですよね。そこで今回はよいソフトウェアを実現するためにSHIFTが取り組んでいる「UX品質」を中心にご紹介したいと思います。
まずUXの話に入る前に、UX品質を必要としている開発現場、セミナータイトルにも含まれている「DX」の説明をしたいと思います。DXとは、「企業が第3のプラットフォーム技術を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデル、新しい関係を通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」(IDC Japan)と示されています。この定義は経済産業省のDXレポートにも活用されており、一般的なDXの概念として定着しています。
DXエンジニアリング:「DXその現状と企業システムに求められるUI/UX戦略とは」2019年11月6日講演資料(南山大学 青山幹雄教授)を基に当社にて編集
実現するためのDXエンジニアリングのなかで、4つの大きな柱があります。
1. 利用者の起点(UX、利用者の価値)・・・利用技術:デザイン思考、アジャイル、要求工学、
2. 経営戦略の起点(全体俯瞰)・・・利用技術:戦略的展望、ビジネスモデルデザイン
3. デジタルプラットフォームの起点・・・利用技術:サービス思考、機械学習ソフトウェア工学、レガシーリエンジニアリング、ソフトウェア工学
4. 事業/業務の起点(効率化、収益増大)・・・利用技術:BPM、要求工学
この4つの柱のうち、利用者の起点がUXです。DXを実現するために重要な項目の一つとしてあげられているのがUXであることを認識いただけたと思います。
開発現場でのUXの悩み、みなさんは思い当たるものはないでしょうか? ソフトウェアの品質保証を手がけるSHIFTでは、日本でも屈指の数のソフトウェア開発現場に携わっています。そのなかで多くの現場から聞こえてきたUXに関しての課題を出してみたいと思います。
これは弊社のUXサービス資料に含まれる情報の一部ですが、切実な課題としてあげられます。なぜこのような課題が発生しているにも関わらず、そのままになっているのでしょうか? それは開発現場での円滑なUX開発を阻む原因となっている大きながけが存在しており、そのがけを乗り越えることがむずかしいためです。
出典:「DX時代のエンジニアが知るべきUXデザイン-DX開発に必須な知識と現場での実践方法を学ぶ-」
第2部「UX品質がもたらす開発現場でのソフトウェア改革」講演資料(吉井誠)
SHIFTが行った調査結果でも次の事実がわかってきました。開発現場でUXへの取り組みが進まない現実が存在しており、すべての開発プロセスのなかにUXを取り入れているのは8%しかなかったという衝撃的な結果も出ています。それだけ開発現場ではUXに配慮することはむずかしい課題であると認識されているようです。
UXに配慮した取り組みが重要であるとわかっているにも関わらず、開発現場で十分に取り入れられていない現実から、この課題を解決することがDX開発現場において、UX開発を円滑に進めるうえで必要であるといえます。
開発現場でUX向上するにはどのようにすればよいのでしょうか?SHIFTでは実践的な3つのアプローチを行っております。
開発現場でのUXに関する言葉を正しく理解し、実現すべき方向を整えるため、SHIFTではお客様への提案の際には言葉の整理を実施するようにしています。特にUX関連のキーワードで混同されやすいUI、UX、CXの違いがあいまいにされていることも多いため、言葉の整理を行うことでその後のUXへの取り組みを円滑にしています。もちろんお客様には正しく理解されている方は多いのですが、すべてのメンバーが同じように理解できているとは限らないため、きちんとご理解いただいたうえでお話しできるようにします。
通常開発フェーズは上流工程から下流工程へ、アジャイルの場合は設計~テストを高速回転で行うことが多いのですが、ソフトウェアの品質保証を手がけてきたSHIFTでは逆転の発想で、どのフェーズからでもUXを正しく実現できるように配慮しました。SHIFTが数多くのテストに携わってきた実績から、UXに配慮されたソフトウェアを作成するために必要な要件を整理し、開発現場での各フェーズでUX向上に必要な内容を定義できたことから実現しました。
出典:「DX時代のエンジニアが知るべきUXデザイン-DX開発に必須な知識と現場での実践方法を学ぶ-」
第2部「UX品質がもたらす開発現場でのソフトウェア改革」講演資料(吉井誠)
利用者の個性や感情で変化するUXを正しく評価するため、またUX品質を網羅的に定量的に評価するため、評価する基準を作成しました。SHIFTオリジナルのUX品質ガイドラインを活用したUX評価は、現在多くのお客様に好評いただいています。
UX品質ガイドラインはこれまで蓄積したSHIFTのテストデータ、公開されている文献・書籍、社内外の人間中心設計の専門家のみなさんと共に開発したUXを正しく網羅的に評価するためのガイドラインです。
UX品質ガイドラインができたとしても、利用者によって変化するUXをどのように評価するのでしょうか?SHIFTではUX品質ガイドラインを使ってUX評価を定量的に行うUXエキスパートレビューを提供しています。UXエキスパートレビューは UX専門家がペルソナや利用シーンを想定して定量的に評価し、課題や改善案を提示するものです。また項目ごとに評価することによって、具体的な課題を見つけ出すことが可能になっており、具体的な課題から適切な解決方法を提案することにつながるため、改善に向けた素早い動きにつながることから実施したお客様から好評いただいています。
出典:J.J.Garrett氏の提唱したモデルをベースにした「DX時代のエンジニアが知るべきUXデザイン-DX開発に必須な知識と現場での実践方法を学ぶ-」第2部「UX品質がもたらす開発現場でのソフトウェア改革」講演資料(吉井誠)
UXエキスパートレビューでは、J.J. Garrettが示したユーザー体験を構成する5つの階層モデルで表層~要件の上位4階層を中心に評価するため、コンサルファームや大手SIerとSHIFTとの協業も可能です。
SHIFTではUXエキスパートレビューからさらに次のような展開を行っています。
1. UXエキスパートレビューとユーザーテストとのセットでさらに精度を高めたUX評価を提供
2. 機能テストにおけるUXへの配慮を加えることで確実なUX品質の向上
3. さらに成功に近づけるための以下のサービスを提供
・開発効率向上/拡張=デザインガイドライン/設計指針作成支援
・設計からUX品質を実現=UX設計支援
・開発業務全般のUX品質向上=UXコンサルティング
・組織での取り組み=教育コンテンツ(ヒンシツ大学UX講座)
特にUXを開発現場で実践するためには、エンジニアのマインドセットが重要になってくるため、ヒンシツ大学UX講座への注目も高くなっています。
いまの開発プロセスでUX開発に配慮されていないなら、これから正しくUXを評価することでソフトウェア開発の改革を実現しましょう。継続的に利用者視点で取り組むことで、本当のよいソフトウェア開発が可能になります。いま、みなさんに気づいていただきたいのは、開発者視点から早く利用者視点に切り替えることです。これからでも遅くはありません。ソフトウェア改革を開発現場のUX品質からはじめましょう!
文中で使用した資料は、SHIFTのUXサービスダウンロードサイトから無料で取り寄せることが可能です。他にもさまざまなお役立ち情報がありますので、ダウンロードして全文をご覧ください。
ありがとうございました。
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