Columnセミナーレポート

2020.9.16

withコロナ時代のエクスペリエンスデザイン

withコロナ時代のエクスペリエンスデザイン 株式会社パルコ 唐笠亮、株式会社SHIFT 花井祐正、株式会社ナディア 弓庭知 小川丈人 デモレーター 黒田亮二

2020年9月16日にオンラインで開催された「withコロナ時代のエクスペリエンスデザイン」。

新型コロナウイルスの影響で緊急事態宣言や自粛、テレワークなど、生活者は新たな生活を余儀なくされている。外出を控えるようになった生活は、新しい生活様式に対応するために企業にDX(デジタルトランスフォーメーション)を促し、デジタルでの顧客接点を通してどのようによい顧客体験を形成すべきかを模索している。

そんななかで、オフラインの比重が高いビジネスを展開するPARCOをはじめとしたショッピングセンターや小売企業のデジタル戦略を推進してきた株式会社パルコデジタルマーケティング コンサルティング一部 部長の唐笠氏の登壇内容をレポートする。

店頭のデジタル化

まず、唐笠氏はPARCOのデジタル戦略のなかで「渋谷PARCOの店頭のデジタル化」について紹介した。
例えば、電子レシート「スマートレシート」への対応。レシートを電子化しお客様のスマホへ届けるのと合わせ、お客様の詳細な購買情報を収集することで、ゆくゆくはAIを使って学習・分析し、お客様それぞれの好みにマッチしたショップや商品、サービスやコンテンツを配信していく予定でいる。

新生渋谷PARCO オムニチャネル型売場「PARCO CUBE」イメージ図

また、渋谷PARCOの5Fのオムニチャネル型売り場「PARCO CUBE」は、タッチ可能な大きなディスプレイを通してお客様自らが商品を探したり選んだりすることができ、それをそのままスマホに転送して、店頭でなくても自身の好きな時間・場所で購入ができるサービス。店頭では戦略アイテムや限定商品を中心にそろえ、その他の通常商品や在庫の奥行きはPARCOのECサイト「PARCO ONLINE STORE」で販売するという仕組み。

「店頭で接客を受けて買うこともできるし、店頭に在庫がない商品や、購入を迷っている商品をスマホにどんどん転送してもらい、後で検討して購入していただくという買い物スタイルに対応している。」(唐笠氏)

共通しているのは、デジタルを活用することでお客様の理解やお客様のライフスタイルに合わせようとする徹底的な顧客視点だ。常に新しいサービスやシステムを導入することで注目を浴びているPARCOだが、PARCOは目新しさだけではなく、徹底して顧客視点でサービスやシステムを提供する。

PARCOのOMOの取り組み

つづけて唐笠氏は店頭で買うことの価値について言及する。
「店舗に足を運ぶこと、店頭で買うことの価値が低下している。いまはECで買えないものはほとんどなく、ECで頼めば次の日に届くような時代。わざわざ店舗に行って接客を受ける価値は大きく変わっていっている。」

ネット×スマホを駆使して生活者は賢く便利にお買い物をするようになっている。本来お客様にとっては必要なものを買うというだけならばAmazonでもよいし、メルカリのようなCtoCでもよい。買う時間、買う場所、買う媒体など、買い物に関わる選択肢は広がりつづけている。唐笠氏は「常時オンラインで、いつでもどこからでも購入できる生活者・消費者に対して、事業者やショップがどのように繋がり、もしくは働きかけ、継続的な関係を構築・維持できるか。デジタル活用、OMOへの対応が一層重要になってきている」という。

OMOへの対応 イメージ図

OMO(Online Merges with Offline)は、リアル店舗などオフラインでの行動もデジタルデータ化されていき、すべてがオンラインになっていく世界だという。つまりオフラインもオンラインも関係なくオンラインのなかに内包されていくという考え方だ。そのような時代のなかでPARCOはショッピングセンターとしてお客様とどのように繋がり、働きかけられるかが重要であると説明する。

唐笠氏は顧客を「個客」と定義し、対象を集合体として捉えるのではなくそれぞれの「個」のお客様と表現する。

「これまでショッピングセンターはお客様を集合体として捉えていた。それに加え、デジタルを活用することでお客様それぞれを個として捉え、お客様の趣味・嗜好や行動データを元にして、それぞれのお客様にぴったりなものを商品単位、サービス単位で提案していく。数多くのショップが集まるショッピングセンターならではの“セレンディピティ”、思わぬ新たな出会い・発見といったものも演出していきたい。」(唐笠氏)

PARCOのOMOの取り組み イメージ図

店舗のデジタル化やスマホアプリを活用すれば、来店中だけではなく来店前、来店後まで含めてさまざまなお客様との接点をつくることができる。その接点から得たデータは「顧客理解のためのデータ」であると唐笠氏は言う。OMO時代では従来の考え方ではなく、取得できるさまざまなお客様のデータを活用して、どのように顧客理解を深められるかが鍵となる。

例として、2014年にリリースし2015年から全国展開したPARCOのスマホアプリ「POCKET PARCO」を挙げた。ショッピングセンター・ディベロッパーであるPARCOは、その業態の特性から「どのお客様に、どのショップで、何をいくらお買い上げいただいたのか」といった販売情報を(ほとんど)もっていなかったが、POCKET PARCOはそれを捕捉する機能を備えている。

これにより、アプリ内でのコンテンツ(Webコンテンツ)の閲覧やお気に入り~実際の来店~店頭売上の相関がはじめて明らかになり、来店や店頭売上を増やすためのさまざまな施策を打ち出せるようになった。

「オフラインがオンライン化することで、店頭は買っていただくだけの場ではなく、個客理解を深める場に変わっていくと考えている。」(唐笠氏)

PARCOのスマホアプリ「POCKET PARCO」 イメージ図

Withコロナにおいて

不要不急を避ける生活がつづいているなかで、オンライン偏重の生活はお客様に新たな購買体験(または非購買体験)をさせることになった。当然ながら、在宅消費と外消費のバランスも大きく変わってきたという。

「自分にとって本当は何の消費が必要か。どうせ同じ消費をするなら、どの企業、どの店舗を支持したいのか。消費者のなかで再選別・再定義が起こっていると言える。そのようななかで、“お客様に選ばれつづけることができるのか”をひたすらに考えつづけなければならない。」(唐笠氏)

Withコロナにおいて今後のテーマ イメージ図

いつでもどこからでもモノを買える時代にお客様に選ばれつづけることができるかは重要な問いである。どのように情報を届けるか、価値を伝えられるか。デジタル化は生活者とのコミュニケーションを容易にしているという側面がある。しかし、唐笠氏は警鐘を鳴らす。

「事業者にとっては気の利いたコミュニケーションとしてやっていても、お客様にとってはウザく感じられる場合もある。また、買ってもらって終わりではなく、どのように継続的な関係構築ができるかが今後のテーマになっていく。」(唐笠氏)

最後に唐笠氏はこう締めくくった。
「これまではリアル店舗とECという、点と点を連携させるところに終始していたと思う。いまOMOが言われているなかで、やっと本格的にリアルチャネルとデジタルチャネルを融合・駆使し、事業者が一つの主体としてお客様に一貫した体験を提供できるようにならなければいけない、そういう時代が来ていると思う。」

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